カルチャーショック
2018年7月より2年間、McGill University Health CentreのRoyal Victoria Hospital (RVH) 麻酔科に、Cardiac Anesthesia Research Fellowとして留学しました。留学中は、術後認知機能障害(Postoperative cognitive dysfunction: POCD)の治療法として期待されるインスリン経鼻投与に関する臨床研究および、虚血心筋モデルのラット心臓に対するグルタミンの心保護効果に関する基礎研究を行いました。
さて、今回は私が留学中に経験した「日本ではまず起こらない出来事」を振り返ってみたいと思います。留学生活を始めたばかりの頃、上司である佐藤先生ご夫妻に「こちらの生活では物事が思った通りに進まなくて当たり前だから」と言われました。初めにこの言葉を聞いていなければ、生活に馴染むまでにもっとストレスを感じていたかもしれません。私にとって非常に印象に残る出来事でした。
①Social Insurance Number (SIN)が発行されない (珍しい出来事のようです)
SINは仕事や生活の様々な手続きに必須の番号です。入国の際に正式なビザを発行してもらったものの、Service Canadaではコンピューター上でビザを照合できないのでSINは発行できないと言われました。一か月待っても番号が届かなければ連絡するようにと言われ、番号が届かず連絡したところ、申請の受付で止まっており手続きは進んでいないとのこと。手元にSINが届いたのは二か月程度経ってからでした。先方に問い合わせる度に「よくあること、あなただけではないから」と言われましたが、よくあることならシステムを変えた方が良いのでは?と思ったものです。
②スーパーのレジでの商品名や値段の打ち間違い
日常茶飯事でした。レジ係の方も故意にやっているわけではなく単純なミスではあるのですが、3倍近くの値段を打たれていたこともありました。レジ打ちの際は品物やその値段が正しく打たれているか確認することをお勧めします。
③スーパーの果物や野菜にカビが生えている
イチゴやブラックベリー、ミニトマトなど、店先に出したばかりと思われる状態のものにカビが生えていることが多々ありました。ヨーグルトにもカビが生えていたことがあります。
④依頼・問い合わせに対する返答がない(もしくはとても遅い)
返答がないことが多々ありました。ある程度時間をおいて返事を待ってから、希望の返信期限を記載してメールを再送しても応答なし、電話してみて「かけなおす」と言われてもかかってこない、ということもありました。
⑤隣の部屋のリノベーションに伴う自室の損傷
帰宅すると部屋の壁が損傷していることが二度ほどありました。アパートの管理人に報告しましたが、損傷に対して怒っていなかったことが不思議でした。日本ではわりと大ごとになると思うのですが。
⑥停電や断水のお知らせが前日、もしくは無い
アパートの工事や点検に伴う停電や断水が時々ありましたが、そのお知らせはほとんど直前でした。
⑦バスの運転手が道に迷う
早朝のバスで空港に向かっていた時のこと、通常とは異なる道を何度も繰り返し通っていたため、乗客が空港まで道案内するということがありました。道案内をしてくれた乗客がいなければ私はフライトに間に合わなかったかもしれません。
以上、ほんの一部を書きましたが、モントリオールの生活を否定しているわけではありません。この2年間、私がお世話になった方々は皆さんとても親切で仕事に対しても真摯に取り組まれていました。街の人も親切です。ただ、日本に色々な人がいるようにモントリオールにも色々な人がいて、異国での生活の中でその違いが時に大きく感じられ戸惑う方もいらっしゃると思います。そこで、一個人の体験談ではありますが「こんなこともあるんだな」とこれから留学される方に感じていただければ幸いです。
最後になりますが、2年間大変お世話になったアカデミー会の皆様に心より御礼申し上げます。様々な専門分野を持った会員から成るアカデミー会の存在により、モントリオールでの研究・日常生活の両面が充実したものになりました。今後のアカデミー会のご発展と会員の皆様のますますのご活躍をお祈り申し上げます。
写真:MUHCのRoyal Victoria Hospitalの手術室の廊下で撮ったもの