- 倉田 洋(東北学院大学経済学部准教授・マギル大学経済学部客員教授)
Revisiting Canada ~経済学的思考から振り返る1年間~
2015年4月より1年間、マギル大学経済学部で客員教授(Visiting Professor)として勤務しております。私がカナダへ滞在するのは2度目です。モントリオールは、以前から私にとって憧れの場所であり、いつか家族と一緒にこのバイリンガル(実際はそれ以上)の環境で生活したいと考えていました。また、マギル大学で優秀なスタッフと一緒に研究することは、研究者としてどうしてもやってみたいことでした。今回、その夢を実現することができました。
私の仕事は、経済学(専門は国際経済学)を研究し、経済学の面白さ・有用性を多くの人に伝えることです。経済学は日常生活の人々の活動について焦点を当て、物事がどういうメカニズムで起こるのかの理由を考え、また、望ましい状態とはどういうもので、それを実現するにはどうするかを考える学問です。経済学というと、お金儲けの話だったり、難しい景気の話だったりというイメージを持つ方が多いですが、大まかに言えば、直面している制約のもとで、いかに効率的な選択をするかを考えます。経済学は、日常生活のいろんな部分に応用が可能です。例えば、私はこの滞在中、滞在期間1年、1日24時間の制約の中で、量的・質的にいかに研究成果をあげるかについて考え、実行してきました。
経済理論の中で、経済主体(消費者、企業、政府といった行動をおこなう主体)は、ある目的(たとえば、満足を最大にする、利潤を最大にする、国民の生活を豊かにするなど)を実現するために行動を決定します。このように、目標を設定して行動を行うことはとても重要であると考えます。私が、家族とモントリオールに住みたい、マギル大学で研究を行いたいという目標をもっていたように、目標を設定して努力することで、その目標は実現する可能性が高まります。
私の研究テーマの一つに、TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする、自由貿易協定・経済連携協定があります。これは、国の間の製品の貿易にかかる関税をなくし、人や企業の移動についても自由化するというものです。簡単に言えば、国と国とがつながるということになります。国同士がつながることで、物・人・企業の動きが活発になり、日々の生活を豊かにすることができるのです。このように「つながり」は重要です。モントリオールアカデミー会は日本人研究者が「つながり」を作れる場です。さまざまな分野で研究をしている人たちからいろいろな話を伺うことができ、それは自分自身・家族の将来、メンバーの将来、将来の研究者にプラスの効果を及ぼす、Win-Win-Winの関係です。今後も、モントリオールアカデミー会の活動に皆さんが積極的に参加され、活発な会となることを祈念しております。